日本の人口は50年後には8800万人
深刻化する少子化問題
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した内容では、2065年には日本の人口が8808万人になるそうです。
ここ何年にもわたって、少子化問題が改善される気配はないみたいで、政府のいう、「2025年までに出生率1.8」はほど遠いと言えそうです。
待機児童解消と少子化対策はまったくの別問題
日本における少子化対策は、1989年に合計特殊出生率が過去最低の1.57になったことから始まったと言われています。
そこで、打ち出したのが、女性子育てしながらもはたらきやすいようにと、男女共同参画社会、さらにワーク・ライフ・バランスといった政策が出たにもかかわらず、ほとんど改善していないそうです。
政府は、女性の労働環境が整備されたら、きっと出生率が上がると言っていたのですが、少子化対策とは別のものと言えるのです。
10年に政府が掲げた、20年までに25歳から44歳までの女性の就業率を73%まで引き上げるという目標は、14年に達成しているのです。
子育て支援を中心とした少子化対策でいくら保育園を増設して待機児童を減らしても、少子化対策としては効果は疑問だというのです。
女性の未婚率が上昇
最大の要因は男性に
日本の少子化の最大の要因を探っていくと、結婚しない女性の割合の増加に行き当たることがわかってきたのです。
既婚女性の出生率は、ほぼ変化がないので、結婚しなければ、必然的に子どもが減ってしまうことになるわけです。
ところが欧米では、未婚や事実婚でも子どもを産んで育てています。だから、子育て施設の整備や社会サービスの拡充といった施策で出生率は上昇したのです。
日本は、結婚を前提とした子育てが中心です。未婚や事実婚では、なかなか子どもは産めません。結婚してから子どもを生むという意識が強いのです。
さらに、景気低迷で男性の収入が下がって、女性との経済的・社会的レベルが近づいたために、女性が結婚したくなるような男性が少なくなったというわけです。
欧米の政策から学べるか?
社会が求める姿とは
スウェーデンの例
かつて、スウェーデンも少子化の悩みを抱えていました。ところが、家族政策により出生率を回復させています。
じつは、スウェーデンでは出生率が、1999年に1.5で最低となりました。ところが、2010年には1.98と回復しているそうです。
徹底した男女機会均等関連法から出発した家族政策、女性解放政策が、結果として少子化を食い止めることに成功したのです。
スウェーデンでは、子どもを出産する間隔を短くすると優遇されます。また、サムボといわれる、住所を同じで、共同生活して、性的関係をもつカップルが9割以上です。
サムボカップルに生まれた子どもは、婚外子になりますが、法律上の差別は全くないそうです。
父親の育児休暇も充実していて、法的にもきちんと認められています。育児給付金も高額です。
そのため、育児休業取得率も高く、取得率は、女性で8割強、男性では8割弱と、男女とも高くなっているそうです。
フランスの例
フランスでは、少子化対策を、1世紀にわたり続けてきたそうです。出産育児にかかわる問題をひとつづつ解決してきたのです。
フランスでは、2子以上になると、20歳になるまで、こどもの数に応じて給付金が出ます。
また、子育て世代で、特に3人以上の子どもを育てている世帯では、大幅な所得税減税があります。
家族補足手当という、第3子から支給される手当が制度化されています。子どもを3人養育すると年金が10%加算されるそうです。
他にも、育児、教育費と言ったことで、子どもが多いほどたくさん支給されるシステムが多くあります。
フランスでは、ユニオンリーブル=自由縁組みという形が一般化してきました。いまや、婚外子は52%に達っするそうです。
婚外子であっても、嫡出子と権利は変わらず、法律でも嫡出子、自然子という用語そのものが廃止されたそうです。
余暇保育といって、学齢自の放課後の保育制度が充実していて、ほとんど費用はかからない仕組みになっているそうです。
少子化の先を見つめる政策
はたして、少子化は解決できるか
さて、少子化対策といったこと答えはあるのでしょうか。というよりも、そもそも少子化を問題とする考え方に疑問を持つことも必要ではないでしょうか。
たしかに、人口が減ると経済成長ができないし、年金制度の維持も難しくなる、そういったことが前提の少子化問題です。
しかし、人口が減っても経済成長する国はあるわけで、低成長で少子化が前提の文化的な国づくりも必要だと言われるようになってきました。
効果のない少子化対策を行うよりも、子どもが減っても、一人一人が生きがいを感じられるような社会の方がこれからは必要になると思います。
経済的に豊かになり、その結果としての少子化です。これからは、多様な生き方が選べるような社会の建設の方が重要かも知れないのです。